そして、大規模災害に世界が見舞われた1年でもある。
昨年の若者の死がきっかけとなった「ジャスミン革命」によりチュニジアの政権が転覆し、中東諸国に広がるきっかけとなり、次々とアラブ諸国の長期政権が倒れていった。
これは、戦後の冷戦構造が崩壊したソ連および東欧諸国の崩壊と同じくらいのインパクトがあり、一つの時代の価値観が瓦解し新たな価値創造に向けた転換期を示しているといえるのではないだろうか。
先進諸国は金融不安を抱え、世界の繁栄を牽引してきたともいえるアメリカまでもが、デフォルトの危機に直面していること自体が、すでに隔世の感があり、既成の思考では捉えられないことは確かであり、この一年の全ての動きが底辺で刺激し合い繋がり合っているように見える。
ジャスミン革命の遺伝子は、中東諸国やアフリカに伝播し、今、ウォールストリートを支配している市民デモに引き継がれているようにも思える。
この革命の特徴は、ファイスブックやツイッターなどソーシャルメディアを駆使していることで、その背後で支援し続けてきたのが「アノニマス」、国際的ハッカー集団である。
そんな協力関係にある?と思われるフェイスブックに、アノニマスは噛み付いた。
今年8月に宣戦布告し、攻撃予告日が昨日の11月5日だった。

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参照記事:
■ハッカー集団Anonymous、「Facebook抹殺」を予告 (Itmedia news 2011年08月10日)
ハッカー集団のAnonymousがビデオ声明を公開し、「11月5日にFacebookを抹殺する」と予告した。
Youtubeに投稿されたビデオはAnonymousを名乗る男の声で、「あなたが深く愛しているコミュニケーション媒体は破壊される。もしあなたが目的を持ったハッカーであり、情報の自由を守りたいと思うなら、この作戦に参加して、自分のプライバシーのためにFacebookを抹殺しよう」と呼び掛けている。
その理由として「Facebookは政府機関に情報を売り渡し、情報セキュリティ企業にこっそりアクセスさせて、彼らが世界中の人々を監視できるようにしている」と主張。さらに「もし自分のアカウントを削除したとしても、個人情報は全てFacebook上に残り、いつでも復元できる」などと述べ、Facebookのユーザー情報管理の在り方を批判した。
その上で、11月5日に予告したFacebook攻撃について「われわれはあなたを傷つけるのではなく、救おうとしている」と言い放ち、「Facebookはユーザーに選択肢を与えていると言うが、それは完全な偽りだ」「『無料』サービスの実態は、彼らがあなたとあなたの情報で金を儲けているということだ」との主張を展開している。
現時点では、フェイスブックがハッキングされたとのニュースはないが、11月4日の時点でアノニマスはさらなるメッセージを公表している。
■04 Nov 2011 Last Video from Anonymous : Operation Facebook Hacking(英語)
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ここでも繰り返しFacebookは政府機関に情報を売り渡し、情報セキュリティ企業にアクセスさせて、世界中の人々を監視できるようにしている」「もし自分のアカウントを削除したとしても、個人情報は全てFacebook上に残り、いつでも復元できる」
と警告し、「あなたの家族についても同じだ」としている。
今までアノニマスは予告したものは確実に実行してきている。その一例で短かなものが、ソニーの「プレイステーション・ネットワーク(PSN)」への攻撃だ。この時のソニーの被害は計り知れないものになった。

ソニーなぜ狙われたのかを下記論説から抜粋してみる。
■ソニーはなぜハッカーに狙われたのか、「アノニマス」の正体 (東洋経済2011/06/08)
≪名前、住所、メールアドレスなど7000万件の個人情報が流出し、別の米国法人も含めれば、グループ全体で1億件超の個人情報が流出した。・・・事の起こりは今年1月上旬。米国のカリスマハッカーであるジョージ・ホッツ氏が、プレイステーション3(PS3)を改造し自作ソフトを動かせるソフト「ルートキー」をウェブ上で公表した。
これに対しソニーはホッツ氏らをデジタルミレニアム著作権法違反で米連邦地裁に提訴。2月16日にはルートキーを使ったユーザーにPSNへのアクセスを制限するとブログで警告した。3月上旬にはホッツ氏のブログなどにアクセスしたユーザーの情報開示を連邦地裁に請求した。
ソニーに限らずゲーム機やスマートフォンのメーカーは、基本的に端末の改造を認めていない。たとえば任天堂は改造ツールを製造・販売した業者を各国で提訴し、一部で販売差し止めを勝ち取っている。海賊版ソフトの利用を防ぎ、知的財産権とビジネスモデルを守るためだ。
ただ、そうした情報にアクセスしようとした一般のユーザーまでを相手に、彼らのネット接続の自由に踏み込んだのはソニーだけだ。ここに「ネットと表現の自由を脅かす対象への徹底攻撃」をモットーとするアノニマスがかみついた。≫
法律にのっとって手続きをしたとしても、過剰なやり方が新たな反感を呼ぶことになることを身をもって学んだ、その対価は膨大な額になってしまったようだ。
アノニマスは正義の味方なのか?それともただのお騒がせ組織なのか?その目的は何なのか?
アノニマスについて書かれているものの中でわかりやすく解説している塚越健司氏の解説記事をかなり長文だが紹介する。
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■「アノニマス」の歴史とその思想 塚越健司
(WEBRONZA 2011年11月02日)
「アノニマス(Anonymous)」。それは英語で「匿名」を意味する集団である。奇妙な仮面を被り、ネット上で高らかと攻撃を宣言し、実際にデモに参 加することもある。2011年4月には、ソニーの運営する「プレイステーション・ネットワーク」を攻撃したことでも知られる彼らは、しばしばメディアで 「ハッカー集団」という言葉で形容されているが、これはじつは正しくない。
昨今の情報社会は、一方でサイバー犯罪と情報流出が叫ばれ、他方で内部告発とウィキリークスに代表される「リーク社会化」の波が押し寄せている。本稿はアノニマスという組織の詳細を追いながら、アノニマスやハッカーが共有する「大義」と今後の企業のあり方について論じたい。
◆アノニマスの起源
アノニマスとは特定の人物を指す言葉ではなく、「ネットの自由」という大義を共有する緩やかな組織団体だと言われている。彼らの起源はアメリカの4chanという巨大画像掲示板にある(4chanは日本の画像掲示板「ふたば☆ちゃんねる」を模したもの)。この掲示板に書きこむ際のデフォルトのハンドルネームがアノニマス(匿名)であり、日本の巨大掲示板2ちゃんねる上において匿名で発言する際につけられる「名無しさん」と同様である。
4chan住人は日本の「2ちゃんねる」の住人と同じく年齢も職業もさまざまで流動的な存在であるが、緩やかなつながりのなかで、ことあるごとに特定の団体への抗議活動を行いはじめる。これは日本のネット上でもしばしば行われる「祭り」に合わせて集まるものに近いものだと想像していただきたい。ただし彼らは「情報の自由」という大義を共有しており、これを侵害する者たちに抵抗するのであり、日本の祭りと比較すれば、一定の指針がある。
◆アノニマスVSサイエントロジー ―― 2008年
アノニマスの簡単な歴史を振り返りたい。セキュリティリサーチャーのNegishi Masafumi氏はブログにて、アノニマスの歴史について詳細に記述している。本稿ではNegishi氏のまとめに依拠しながら論をすすめる。
http://d.hatena.ne.jp/ukky3/20110908/1315536752
アノニマスは4chan内で2006年頃には形としては成立していたようであるが、彼らを一躍有名にしたのが2008年、アメリカの宗教団体「サイエントロジー」への抗議活動である。詳細を割愛して述べれば、アノニマスはYoutubeに投稿されたあるビデオの削除をサイエントロジーが求めたことに反対するための活動を開始した。サイエントロジーとしては広まって欲しくない映像であるが、情報としての映像を削除することは「情報の自由」への侵害なのである。
当初のアノニマスは相手のサーバをダウンさせる違法行為のDDoS攻撃といった、いわゆるサイバー攻撃も行われたが、最終的に平和的なデモ活動に落ち着いた。2008年2月10日に行われたデモは、世界93都市で7000人が参加したと言われている。このときサイエントロジーから個人の顔を特定されることを避けるために仮面がつけられたが、これこそがその後、彼らの存在を決定的に特徴づける。
この仮面は、イギリスで80年代に描かれたコミック『Vフォー・ヴェンデッタ』に登場する。『Vフォー・ヴェンデッタ』は、全体主義国家となった近未来のイギリスにおいて、体制に抵抗する主人公「V」の活躍を描いた作品であるが、仮面は17世紀のイギリスに実在したガイ・フォークスという人物を模したもので、彼が体制への反逆者であったことから「V」を被っている。自由の抑制に対する抵抗を、仮面が証明するというわけだ(ちなみにこのコミックの映画が2006年に公開されている)。
対サイエントロジー活動後にアノニマスは4chan内へと戻るのであるが、対サイエントロジー活動を継続するものたちも現れた。彼らは一般に「チャノロジー(Chanology)」と呼ばれ、合法的なデモ行為を行ないつづける。チャノロジーは大枠としてはアノニマスに包括される集団ではあるが、アノニマスという組織のなかにチャノロジーという分派が現れたという意味において、アノニマスの第一の分裂である。
◆オペレーション・ペイバックとアノニマスの分裂 ―― 2010年
アノニマスは「情報の自由」を守る、という大義を共有しており、ゆるやかの集合性は保もちながら活動を継続してきた。ただし、2010年頃からは一層過激な集団がアノニマス内に現れる。
2010年、アノニマス内にオペレーション・ペイバック(Operation Payback)と名付けられた活動がはじまった。これは情報の自由を掲げ、海賊版の合法化などを主張する「海賊党」という政党に対して行われた攻撃に対抗するためのものであった。オペレーション・ペイバックはその後2010年末、ウィキリークスがビザカードやマスターカードから寄付受付を停止され締め出しを受けた際にも、これら企業への攻撃を開始する。その際に使われたのが、DDoS攻撃などのわゆる違法なサイバー攻撃であった。
合法的な抗議活動を志向するチャノロジー一派はこれらの活動に反対し、両者は袂を分かつこととなった。しかし両者ともに「アノニマス」という看板とガイ・フォークスの仮面を外すことはなかったがゆえに、「アノニマス」内にふたつの派閥が存在することになった。合法的な集団=チャノロジーの一方で、非合法活動を推進する方はメディアで取り上げられるが故に、ここに一般にアノニマスを形容する際の「ハッカー集団」という誤解が成立する。「情報の自由」という大義は共有すれども、その目的を達成させる「手段」はアノニマス内部でもさまざまにあるのだ。ただし両派を行き来したり、同時に両派に所属するものもいると言われており、両派のあいだに完全な確執があるとも思われない。
ちなみに、この頃になるとチャノロジー、オペレーション・ペイバックの参加者共に4chanから、IRCというインターネットを利用した専用のチャットシステムを利用し、専用サーバによるネットワークのなかで、より密度の濃いコミュニケーションを取り始めている。そして以降チャノロジーはAnonNetと呼ばれ、ペイバック参加者はAnonOpsと呼ばれる。名前から分かる通り「Anon=Anonymousの略」をつけながら、異なる活動を行うというわけである。
◆アノニマス・アナリティクス ―― 2011年
2011年は、さらに「アノニマス・アナリティクス(Anonymous Analytics)」という集団も現れた。「アノニマス・アナリティクス」は、アノニマスメンバーが設立した「内部告発サイト」であり、ウィキリークス同様リーク情報を受け付けている。彼らはウィキリークスのようにリーク情報をそのまま公開するだけでは一般人には文脈がわからないとし、リーク情報をもとに彼ら自らが調査報道を行う。今年9月に立ち上げられたサイトには、「超大現代農業(チャオダ・モダン・アグリカルチャー)」という企業の株価操作に関する疑惑を指摘するレポートを提出している。
現在のアノニマス内では、中東の革命を支援するための活動や、SonyへのDDoS攻撃など、オペレーションごとにさまざまな人びとが出入りを繰り返しており、複数の活動に参加するものもおり、ますます複雑である。さらにアノニマスのメンバーがアノニマスから完全に独立してつくられた「ロウズセック(LulzSec)」は、50日限定の活動期間のなかで、企業をクラックして盗み出した個人情報を彼らのHP上で公開し、アノニマスメンバーからの批判も浴びた。しかしロウズセックメンバーの大半は、その活動終了後にはアノニマスに戻っていったとされている。
このように、アノニマスの活動は多岐に渡っており、外側からだけでは彼らの構成人数などの内実は見えてこない。唯一彼らを彼らたらしめる証が、「情報の自由」という大義と「ガイ・フォークスの仮面」である。
◆大義とアイコン
これらの複雑な歴史を参照するだけでも、アノニマスをたんに「ハッカー集団」と名指すことの不正確さが読者にもお分かりいただけたと思う。彼らは「情報の自由を守る」といった大義を共有しさえすれば、大義遂行への手段は、合法、違法、調査報道まで幅広い。つまり、彼らは情報の自由を守るという「大義」を名目に集合し、明確なリーダーの代わりに、ガイフォークスの仮面という「アイコン」を媒介に、世界中に価値を訴える理念集団としか形容できない存在なのだ。ただし、個々の作戦内での統率は取れても、アノニマス全体に組織性はあまりない。それどころか、誰でも仮面を被って宣言すれば「自称アノニマス」として振舞うことすら可能になる。
◆見えない仮面に隠された思想を見抜け
ウォール街のデモに端を発する昨今の世界規模の「オキュパイ」運動においてもアノニマスは積極的に活動し、銀行を困らすために預金をすべて特定の日に一斉に引き出せ、というキャンペーンなども行なっている。こうした宣言はすべてネット上で仮面やアノニマスのロゴをアイコンして伝えられる。実際の攻撃はDDoS攻撃であったりデモであったりと、ここでも大義遂行のための手段が複数存在する。
こうした彼らの試みは、ハック(hack)とアクティヴィズム(Activism)を足して「ハクティヴィズム(Hacktivism)」と呼ばれる。情報技術を駆使してさまざまな問題を解決しようという思想である。ハクティヴィズムを志向する団体としては、アノニマスのほかにもウィキリークスなどが有名である。
アノニマスを企業の側からみればどうであろう。今後の企業・政府運営は見えない仮面につねに見張られていることを意識せねばならなくなった。彼らが何を目指し、何に対して敵意を抱くのかといった彼らの思想を分析しなければ、今後の企業は思わぬ躓きをすることになるかもしれない。注意すべきは「法的正当性」があればいいというわけではないということだ。たとえば「ソニー」は、2011年4月にアノニマスをはじめとするハッカー集団に攻撃され、1億件以上の個人情報を流出させ、その信用を失墜させられた。ソニーがアノニマスに目をつけられたのは、あるハッカーに対する過度な法的処罰を求めたためである。
ソニーの判断は「法的」には「正当」であったかもしれない。しかし、「情報の自由」という思想に対処するには、それだけでは足りない何かがある。「法」に依存するだけでは、企業とアノニマスの対立はますます過激化し、とめどないサイバー戦争が繰り広げられるだけであろう。もちろんたんにアノニマスに譲歩すればいいというわけでもない。コンプライアンスを超えた「大義」への対処をしてはじめて「経営」が成立する社会が、われわれの目の前に近づいているのである。
アノニマスについてはその歴史を語るだけで紙面がいくつあっても足りない。いずれ稿を改めて様々な論点を考察したい。
塚越健司(つかごし・けんじ)
1984年生。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程在籍。若手の言論発信空間 「.review(ドットレビュー)」の編集。はやくからウィキリークスに注目し、2010年5月頃からメディアにて積極的に発信。共著に『日本人が知ら ないウィキリークス』(洋泉社)。その他『週刊エコノミスト』『週刊 SPA!』『宣伝会議』『ユリイカ』『月刊サイゾー』等、さまざまな媒体に寄稿している。
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昨日、報じられたニュースでは、アノニマスが予告し、実行する前に解決するという例がメキシコの麻薬密輸組織との抗争である。
10月30日に、メキシコの麻薬組織「セタス」に拘束された仲間を開放しなければ、協力者である警察官などの実名などの情報を暴露するとユーチューブに投稿し宣戦布告していた。
参照記事
■ハッカーが麻薬密輸組織に宣戦 「仲間返さねば情報暴露」
(共同通信2011/11/01 12:27)
【ニューヨーク共同】国際的なハッカー集団「アノニマス」を名乗るグループが、メキシコの麻薬密輸組織「セタス」に誘拐された仲間の解放を要求し、受け入れなければ組織の協力者の身元などグループが入手した秘密情報を暴露するとビデオで宣言した。AP通信が10月31日伝えた。
APによると、ビデオは動画投稿サイト「ユーチューブ」に掲載。「誘拐、盗み、恐喝を繰り返すセタスにはうんざりだ」と非難し「おまえたちは重大な過ちを犯した。彼を解放せよ」と要求、セタスと結び付いた警察官、ジャーナリスト、タクシー運転手らを公表する用意があるとした。
その時に投稿された動画:
■国際的ハッカー集団「アノニマス」がメキシコの麻薬組織に宣戦布告
そして昨日、仲間が開放されたと報道されている。
■アノニマス関係者、麻薬密輸組織から「解放」
(沖縄タイムス2011年11月5日 10時57分)
【ロサンゼルス共同】メキシコの麻薬密輸組織「セタス」に誘拐された関係者の解放を要求し、受け入れなければセタスの秘密情報を暴露すると宣言していた国際的ハッカー集団「アノニマス」を名乗るグループは4日までに、この関係者が解放されたことを明らかにした。
一方でセタスから、アノニマスが情報を1件公開するごとに「10人に対して報復する」と脅迫されたと説明。「無関係の市民を巻き込むわけにはいかない」として、セタス関連の情報の暴露は当面行わないと表明した。
同グループの中南米地域のサイト「アノニマス・イベロアメリカ」に掲載された声明によると、解放された関係者は軽いけがをしているが、元気だという。
■アノニマス「仲間解放された」 麻薬組織から脅迫つきで
(朝日新聞2011年11月5日19時8分)
アノニマスは、麻薬密売組織「セタス」と結び付いた警察官、ジャーナリスト、タクシー運転手などの情報を持つことで、仲間の開放に成功している。情報自体が実弾となっているということだ。
アノニマスから分派した組織「アノニマス・アナリティクス」が直接取材して公表するとして、情報戦を表の舞台に据え、推し進めていくようだ。
参照
■アノニマスが調査報道 告発サイトで受け付け→直接取材
(朝日新聞2011年10月10日3時3分)
「ネットの自由」を掲げて政府機関や企業に違法なサイバー攻撃を繰り返してきた国際ハッカー集団「アノニマス」の一派が、合法的な調査報道に乗り出した。内部告発を受け付けるサイトを9月に立ち上げ、情報をもとに対象となる組織や人物に直接取材する正攻法だ。
サイト名は「アノニマス・アナリティクス」。政府機関や企業の不正告発情報を、暗号技術で保護しつつサイト上で受け付ける。内部告発サイト「ウィキリークス」のように、入手した文書をそのまま丸ごと出したりはせず、直接取材などによる事実確認を経て、報告書の形でサイトで公表する。スタッフは様々な国・地域の出身で、コンピューターの専門家のほか、財務を分析する会計士や、弁護士も擁しているという。運営資金は、証券取引などでまかなうことになりそうだとしている。
アノニマスのメンバーは朝日新聞の取材に応じ「ウィキリークスはよい概念をもたらしたが、生データをそのまま出すだけでは一般のに人はなかなか理解できず、読むのが面倒とさえ思う。誰もがわかる情報にすればより影響力が強く、新たなジャーナリズムになる」と話した。
関連記事
■ハッカー集団アノニマスがジャーナリストに
(yucasee media.2011年10月10日)
≪・・・告発サイト「ウィキリークス」は、タレこまれた機密文書をそのまま流す方式を取っているが、アノニマスが大きく異なる点は、ダイレクトにではなく、徹底した調査と取材を経て公開されるというところ。
アノニマスには、会計士、弁護士、統計学者ら各分野の専門家を抱えているといい、それらの人材の調査と取材によって吟味した上で、文書が公開されるという。・・・≫
昨年来、「ウィキリークス」が狙われ、代表であるジュリアン・アサンジ氏は性犯罪者に貶められようとされていて、ウィキリークス本体へのの献金も次々に封鎖されて、実質的に動けない状況である。
≪政府等の内部文書を公開する民間サイト「ウィキリークス」の創設者ジュリアン・アサンジ容疑者(40)がスウェーデンでの性犯罪容疑で英国で逮捕された事件で、ロンドンの高等法院(高裁)は2日、同容疑者のスウェーデン移送を認めた。■アサンジ容疑者のスウェーデン移送、英高裁が認める(ロイター2011年11月3日)≫
先日は、シリア政府の治安部隊が、各地で広がるアサド政権打倒を叫ぶデモ隊に向けて発泡を繰り返しているため、シリア国防省のサイトを攻撃している。
■シリア国防省サイトを攻撃=反体制デモを支持―国際ハッカー集団
(朝日新聞2011年9月27日7時6分)
【カイロ時事】国際ハッカー集団「アノニマス」は26日までに、反体制デモ弾圧を続けるシリアの国防省のウェブサイトにハッカー攻撃を仕掛け、乗っ取った。サイトには、シリア国旗にアノニマスのロゴが加えられたイラストや民主化運動を支持する声明が掲載された。
声明は「残忍なバッシャール・アサド体制に反対し、あなたたちを支持する。全ての暴君は失脚する。次はアサドだ」と国民に呼び掛けた。シリア軍に向けては「あなたたちはシリア国民を守る責務がある。独裁体制に立ち向かえ」と訴えた。
また、最近では児童ポルノサイトを訪れた190人のIPアドレスを掲載したと発表している。(参照記事)
それは児童性愛者をネットから追放する最新の試みであるということだ。
アノニマスは、「ネットと表現の自由を脅かす対象への徹底攻撃」をモットーとしているが、自由ばかりではなく責任をも追及しようとしているようにも思えてくる。
また、それはネットの世界だけを対象とするものに限らず、人間の自由を拘束するあらゆるものからの開放を標榜するものであり、自由を遮断する国家および国家権力に対する徹底抗戦とも映る。
特に長期独裁政権が続くと、その権力を維持するための国家的監視システムが存在する。すなわち反体制分子など政権とって有害と思われる人物や思想の監視や摘発などを強化して、徹底的に情報を管理し監視する。
それには自国民の多くも利用され、自分の家族すら告発するという徹底ぶりである。
またメディアの統制から、外国からもたらされる情報や外国人の監視・摘発など、警察組織やそれに準ずる市民組織が監視するシステムが必ず存在する。
そして、それが独裁国家だけではなくなってきたところに現代の深い闇、病巣がある。
アメリカの「愛国者法」 や我が国の「コンピュータ監視法」などに代表されるものだ。
テロやデマを監視するためという大義名分を掲げつつ、そのココロは国民に対する監視であり情報統制である。
参照記事
日本に住むAnonymousの1人に取材した記事
■番外編 本当のAnonymousが知りたいの
(NTTデータ先端技術株式会社 2011/6/22)
■目的は表現の自由?ハッカー集団アノニマスとは
(allaboutニュース 2011年06月15日)
参照動画:
■アノニマス10/3:自由を求める世界の市民へ
10月15日に世界中の市民は通りや広場に集結して声を上げます。
On October 15, people will take to the streets and public plazas the world over.
私たちの運動はアメリカからアジア、アフリカ、ヨーロッパへと広がり、奪われてきた権利を取り戻して真の民主主義を求める声を世界中に響かせようとしています。今、私たち-、世界の市民がひとつになって新しい地球文明を創造しようとしているのです。
From the Americas to Asia, from Africa to Europe, these people are taking action to reclaim their rights and demand real democracy. Time has come to unite in a global, non-violent protest.
権力を持つ者たちは上層階梯にある一部の者たちに仕え、大多数の市民の意志を無視してきました。そして、私たちの生命や健康と地球環境を犠牲にして利益を求め、多大な苦し-みを私たちに押しつけてきたのです。この耐え難い状況はすぐに終わらせなければなりません。
The powers that be work for the upper echelons while ignoring the will of the majority as well as the human and environmental costs we all suffer from. This intolerable situation has to end.
世界中の市民たちが声をひとつにして、政治家たちや彼らが仕える金融エリートたちに知らしめなければなりません。「私たち、市民こそが自分たちの未来を決定する権限を持つ-のである。」
United as one voice, we will let the politicians, as well as the financial elites they serve, know that it is up to us, the people, to decide on our future.
「私たちは彼らの手中にある製品ではなく、彼らは私たちを代表する者たちでもない」ことを・・
We are not products in their hands nor in the hands of the bankers and they do not represent us.
10月15日に私たちは通りを行進して、自分たちの求める世界の変革を開始するのです。私たちは平和的に抗議し、語り合い、自らを組織します。求めるものを手にするまで・-・
On October 15th, we will take to the streets and initiate the global change we all want. We will protest peacefully, debate and organize until we obtain it.
力をひとつに合わせる時は今です。私たちの声を世界に響き渡らせましょう。
Time has come to unite. Time has come to be heard.
世界の市民の皆さん、10月15日に私たちはひとつにまとまりましょう!
People of the world, mobilize on October 15th!
■アノニマス10/17:11・5銀行口座移動デイの呼びかけ
こんにちは。アノニマス(匿名)からご挨拶申し上げます。
Greetings, We are Anonymous.
一カ月以上にわたって、私たちはオキュパイ抗議運動の信じられないほどの成功を目にしてきました。
Over the past month, we have witnessed the Occupy protests grow to unbelievable strengths.
82カ国、1000にわたる都市でオキュパイ運動は参加者を広げてきました。
82 countries and 1000 cities are currently joining in the Occupy movement.
オキュパイ運動は30日目を過ぎようとする今も、止まる兆しを窺わせてはいません。
Occupy Wall Street is currently heading into its 30th day of protest and is showing little signs of stopping.
ここで皆さんに提案をさせていただきます。来る11月5日に「銀行口座移動デイ」の実行を呼びかけたいと思います。
This November the 5th, we invite you to join us, for Bank Transfer day.
私たちは、オキュパイ運動の参加者の皆さんに現在の銀行口座にある資金のすべてを「非利益クレジットユニオン」に移すことを呼びかけたいと思います。
We invite you to remove all funds from your bank account and transfer them to a not-for-profit credit union.
私たちは共に、その日を銀行家が忘れることのできない日にしたいと思います。
Together, we will show banks a day they will never forget.
11月5日は彼らが死ぬまで忘れられない日となるでしょう。
They will remember, the 5th of November.
私たちはアノニマス
私たちは正義の戦士
私たちは不正を許さない
私たちは皆さんへの約束を忘れない
We are Anonymous.
We are Legion.
We do not forgive.
We do not forget.
Expect us.

参考資料
■ハロウィンとガイ・フォークス・デー(イギリス情報サイト)
ガイ・フォークス・デーとは?
その起源は今から400年前に遡ります。
1603年にエリザベス一世が跡継ぎを残さないまま崩御し、スコットランドのメアリー女王の息子である「スコットランド王ジェームズ六世」が、「イングランド王ジェームズ一世」としてイングランドとスコットランド両方を治めることになったのです。
カトリック教徒の間で、自分たちをを弾圧するジェームズへの不満が高まり、国王を暗殺しようという計略が持ち上がりました。
1605年11月5日に、国会に爆弾をしかけて、国王ジェームス1世を殺害しようと考えた集団がありました。
それがガイ・フォークス(Guy Fawkes)を含む13人のカトリック教徒による陰謀「Gunpowder treason Plot」でした。
この事件の首謀者は、カリスマ的リーダー、ロバート・ケイツビー。
ウェストミンスター宮殿(国会議事堂)を開会式の日に爆破することによって、劇的なかたちで国王ジェームズ一世と国会議員たちを亡きものにしようと企んだのです。
彼らは36樽の火薬(gunpowder)を用意し、貴族院の地下室に隠しておき、実行の日を待っていました。
幸い、この爆破計画は前日に見つかり失敗に終わりました。
このことを記念する日が、11月5日のガイ・フォークス・デーです。
この日が近づいてくると、日暮と共にあちこちから花火の音が、深夜まで響いてきます。
そして、ガイ・フォークス・デーには、ガイ・フォークスの人形を作り、それを燃やしたり、大きな花火大会やたき火が各地で催されます。
ガイ・フォークスは、1570年ヨークシャーに生まれプロテスタントとして育てられましたが、後にカトリックに改宗しました。
スペイン軍に傭兵として加わっていたこともありました。
計画実行前、仲間のひとりフランシス・トレシャムは、カトリックの国会議員たちを巻き込むことに反対、彼の義兄でカトリック議員である第四代Monteagle男爵ウィリアム・パーカーに、11/5には国会に近づかないよう伝える匿名の手紙が届けられました。
Monteagle卿の報告によってこの陰謀が明るみに出てしまったのです。
開会式前夜に国会議事堂が徹底捜索され、11月5日未明に36樽の火薬の点火係として地下室に潜んでいたガイ・フォークスが発見され、その場で逮捕されました。
拷問などにより獄中で死亡した者たちを除いて、残りのメンバーは1606年1月末に公開処刑されました。
この事件の名残で、イギリスでは現在でも国会の開会式前には、"the Yeomen of the Guard"と呼ばれる衛兵たちによってウェストミンスター宮殿中を大捜索することが伝統となっているのです。
本人たちも現代まで引き継がれて行事になっているなんて知ったら驚くでしょうね・・・。
ちなみに英語で「男」を意味する「guy」という言葉はこの人物の名前が由来なんだそうです!
スコットランド地方では政府に不満があった地域もあり、ガイ・フォークスを英雄として祭られているのです。
■ガイ・フォークスの日(11月5日)にフェイスブックを攻撃(『記録帳』より)
世界最大の交流サイト「フェイスブック」を、ガイ・フォークスの日にあたる11月5日に破壊するという犯行予告の音声を吹き込んだ動画が今月上旬までに動画サイトyoutubeに投稿されました。しかし、別のアノニマスの一員らがツイッターで「一部が計画しているもの。必ずしも全てのアノニマスが 同意しているわけではない。」「我々は、真の権力に立ち向かうことを意図するのであり、
我々がツールとして使っているメディアに立ち向かうのは本意ではない。」と反論している。
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