「渡り」あっせん? 告発の背景(東京新聞)

「渡り」あっせん? 告発の背景
 (東京新聞「こちら特報部8月12日付)

「政権交代で全面禁止された『渡り』のあっせんが、いまだに行われていた可能性がある」。

国土交通省OBからの告発をきっかけに、同省が調査に乗り出した。「全面禁止」は2009年衆院選マニフェスト(政権公約)に盛り込まれていた民主党の目玉政策の一つ。民主党政権が掲げた公務員制度改革の「金看板」も揺らいでしまうのか。。
  (篠ケ瀬祐司)

 国土交通省OB「OB人事を裏で決めているのは○○さん(国交省幹部の実名)ね?」
 課長「そうです」
 告発をした国交省OBは、同省大臣官房のある課長と五月二日に電話し、会話内容を録音した。録音記録を聞いてみると、同省幹部が、OBの天下りや渡りを差配しているとも取れるやりとりがあった。
 告発をしたOBは四月中旬、国交省所管の財団法人「海技振興センター」(東京)の理事に関する人事で、ある同省幹部が関与しているとの話を耳にした。
 OBは事実関係を確かめようと課長に電話して、同省OB人事に現職幹部が関与しているとの感触を得た。
 OBは同日中にこの幹部にも電話をしている。
 OBと幹部の会話内容の録音を聞いてみると、幹部は「(再就職した法人の)任期が切れたり、仕事を離れたりする人が出ると、法人から連絡が入ったりするから、○○君(課長)と私で情報として共有している」と、OBの動向をある程度把握していることは認めている。
 一方で「OB人事を最終的に決めているのか」との質問には、幹部は「役所はやっていないということが基本。法律のルールだから、関与していないと言わざるを得ない」などと説明。海技振興センター理事の人事のあっせんは「やっていない」と明確に否定している。
 課長と幹部の説明が食い違っていることから、OBは五月十二日に、同センター理事長に確認の電話を入れた。
 OBと同センター理事長の会話の録音記録を聞くと、理事長は「詳しいことは勘弁してほしい」としながらも、この同省幹部に呼ばれ「○○君(同センター理事)を替える」と言われたと話している。
 理事長はこの幹部に対し「○○(理事)に希望を出させてくれ」と、理事本人が退職を希望した形を整えてくれるよう、要請したとも説明している。
 現職官僚による天下りや、天下りを繰り返す渡りのあっせんは国家公務員法で禁止されている。OBは課長や同センター理事長の話から、現職官僚が同省OBの人事に関与しているのではないかとして、録音記録を塩川鉄也衆院議員(共産)に持ち込んだ。
 塩川議員は七月二十九日の衆院内閣委員会で「内部告発」として、会話の内容を紹介した。
 塩川議員は「現職幹部官僚によってあっせんが行われていたという、重大な疑惑が明らかになった」として、枝野幸男官房長官に調査を要求。枝野氏は「国交省の政務三役でしっかり調査させたい。官房でもしっかり見ていきたい」と応じた。
 枝野氏の答弁を受け、国土交通省は三井弁雄副大臣を委員長とする「再就職あっせんに関する調査委員会」を設置。八日から関係者の聞き取り調査を始めた。
 同委事務局は「調査中なので中身の話は言えないが、聞き取りの中で、国会での指摘とは違うとの事実が出ている」と説明する。

 「録音記録がねつ造との前提でやっているわけではない」(同委事務局)というから、関係者がこれまでの経緯や発言の真意などについて、説明しているとみられる。
 告発で名前が挙がった関係者に取材を申し込むと、同省幹部と大臣官房の課長は、同省広報課を通じて「調査中なので取材には応じられない」と回答。海技振興センター理事長と、四月に理事に就任した同省OBも「個別の質問への対応は控える」と文書で回答してきた。
 同センター理事を退任し、六月に社団法人「日本冷蔵倉庫協会」(東京)理事長に就任した同省OBは、「調査中なので(回答は)差し控えたい。個人としては問題があることは一切無いと思っている」と話している。
 出身省庁のあっせんによる官僚OBの天下りや渡りに対しては、多額の報酬や退職金を受け取っているなどとの批判が高まり、二〇〇七年の国家公務員法改正で、現職官僚によるあっせんが禁止された。
 すると自公政権は〇八年末に、渡りを容認する例外規定が盛り込まれた政令を閣議決定。さすがに与野党から批判が噴出したため、政府は〇九年中に、天下りと渡りの各省庁あっせんを廃止する政令を閣議決定した。
 同年に行われた衆院選で、民主党は政権公約に「天下り、渡りのあっせんを全面的に禁止する」を明記した。同年九月に発足した鳩山内閣は官僚の再就職をめぐり、あっせんの全面禁止や独立行政法人の役員公募などを打ち出した。
 政府は、こうした措置の結果、天下りが減ったと成果を強調している。総務省によると、昨年一年間に独立行政法人や公益法人などに再就職した国家公務員数は五百二十一件で、〇九年の千百二十五件から、大幅に減っている。
 もしあっせんが続いていたなら、こうした民主党の「看板政策」を、官僚がないがしろにしていたことになる。同調査委が、どのような調査を行うかや、結果発表で国民が納得いく説明ができるかがカギだ。
 同調査委のメンバーは三井委員長のほか市村浩一郎政務官と二人の弁護士の計四人だ。
 同調査委事務局は「国交政務三役でしっかりやるようにとの官房長官の答弁を受けた上、客観性を持たせるための人選だ」と説明する。だが、弁護士二人は同省が人選・依頼しており、中立性や発言力に懸念が残る。
 国会で問題を指摘した塩川議員も「幹部官僚の不正を糾明する、厳正な調査が行えるかどうかが問われている」と指摘。
さらに「あっせん禁止ではなく、天下りそのものの禁止という大原則に立ち返るべきだ」と、一層厳しい対応が必要だと強調している。

<デスクメモ> 「渡り」で最も罪深いのは法外な報酬と退職金だ。二、三年の就任期間で数千万円も懐に入れ、繰り返す。これほどの利権構造を賢い官僚が簡単に手放すはずがない。カラスを「白い」と強弁しても逃れようとするだろう。厚い壁を破るには執ような内部告発しかない。関係者の情報をお待ちします。(充)





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